井上兄弟の行動力に、心が突き動かされる。
こんな方におすすめ
- 新しい時代に不安を感じている人
- 前向き思考になりたい人
- 幸せについて考えてる人
- 自分を変えたい人
本書について
タイトル
僕たちはファッションの力で世界を変える
ザ・イノウエ・ブラザーズという生き方
作者
井上聡 / 井上清史
取材・執筆 石井俊昭
ザ・イノウエ・ブラザーズについて
デンマークで生まれ育った日系二世兄弟、井上聡と清史によるファッションブランド。
生涯の過程で地球環境に大きな負荷をかけない、生産者に不当な労働を強いない
"倫理的なファッション"を信条としている。
代表的なアイテムはアルパカを使用した衣類
ザっとした序章
デンマークで生まれた井上兄弟は子供のころに父親を病気で亡くしている。
母親1人と兄弟が、異国で貧しい生活を過ごす。
幼少期感じた様々な葛藤からの反骨精神で、
兄はグラフィックデザイナーとして
弟はヘアデザイナーとして
仕事で成功する。
ところが、兄弟は本当の幸せを得ることはできなかった。
なぜなら、政治的なお金の話が多くなり
欲とエゴで生きていることに嫌気がさしていたからである。
昔、父が話していた、仕事の本質について改めて考え
お金儲けではなく、社会貢献を目的とする事業
『THE INOUE BROTHERS...』を立ち上げた。
行動力の源
父の存在
井上兄弟の父はデンマーク王室御用達のガラスブランドで専属デザイナーをしていた。
当時父は社長の指令で、
父の下で働いていた硝子職人たちのリストラを命じられていた。
しかし、父にはそれがどうしてもできなかったという。
部下より遥かに給料が高い父が代わりに辞めた。
父は自らを犠牲にして職人たちの雇用を守ろうとしたのである。
「世の中にはお金や名声よりも大切にしたいものがある それが自分の信じる正義なんだ」と
父は病気で亡くなる前に、生き方について兄弟に語ったと書かれている。
出会い
NGO(Non-Governmental Organization)で活動していた友人の勧めで、
兄弟はボリビア先住民たちの文化と出会う。
2人が衝撃を受けたのは、
先住民の人々が過酷な暮らしを強いられていることと同時に、
そのなかで気高さと喜びをもって生きている姿だった。
この人々が大切に守ってきた文化の上質さを世界に伝え、
その利益が公正に還元される仕組みをつくるにはどうすればいいのか
これが、ザ・イノウエ・ブラザーズの指針となる。
感想
本格的にファッションの仕事をしたことのない2人が
”世界一のアルパカ”の商品を作ると宣言してもなかなか簡単にはいかない。
これは日常でも感じることで、
目標を立てることは簡単だが実行するのが難しい、継続するのが難しいといったことだと思う。
ましてや、お金のためではなく正当な社会の仕組みに変える
といった大きいことをやるのは容易ではない。
彼ら兄弟の世の中を変えたいという熱量は本越しに伝わってくる。
偽善ではなく、文化を現地の暮らしを守りたいという真摯な気持ち。
特に面白かったのが、価値観について
本当の価値を決めるのは、希少性でも価格でもない。そこにどれだけ、つくり手の熱い情熱と魂を込められるかなんだ。
『僕たちはファッションの力で世界を変える』より引用
まさに、この兄弟が言うからこそ響いてくる。
高ければいいとか限定品だからいいという考え方は、もはや古いのかもしれない。
僕自身もバックボーンが重要なのはここ数年で感じるようになってきた。
実際にザ・イノウエ・ブラザーズのアルパカ製品を手に取ったことがあるが
本当に暖かく気持ちがいい。
人がエゴを乗り越えて真に豊かな世界を築くこと
新しい時代の生き方を教えてくれる、そんな本を若い人に読んでほしいと思う。