「平穏な人生?それが運命なら自分で変えてやる!」
そう決意してこぎだした自転車世界一周の道。
七年半にも及ぶ大興奮紀行エッセイ。
導入
僕が中学生のころ、
「一日中ママチャリをかっ飛ばしたらどこまで行けるか?」
なんて考えを行動に移したことがある。
普段、車でしか訪れたことのない町に到達したとき
「今、青春してるぜ!」なんて充実感が湧いてきた。
僕は会社員になってからこの本と出合ったのだが、
それまで本を読むのが苦手で避けていた。国語の教科書でさえもだ。
タイトルの勢いと昔の思い出がリンクして
何気なく本屋で手に取ったのだが、
1日で読み終えてしまった。
ハートに火がついたような気がした。
僕が会社員になってからの生活はすごくルーティン化していて
なんだか刺激がたりなかったのだ。
感想
著者である石田ゆうすけさんは7年半という時間をかけて世界をみている。
膨大なスケールである。
著者も、会社員であったようだが、
辞表を出してまで旅にのぞんでいる。
「運命を変えてやる」という強い意志が、
人生(エピソード)にいい味をもたらしているのだと思う。
考えは頭にあっても行動になかなか移せないことが多いので感心してしまう。
自分が未体験ならば、そこは紛れもなく"フロンティア"である。
実際そこに行って己の目で見ない限り、それは自分にとって永遠に"未知"なのだ。
『行かずに死ねるか!世界9万5000㎞自転車ひとり旅』より引用
現代社会は情報が飛び交う時代で家にいても世界中の風景は見ることができる。
しかし、著者は自分の五感で感じることに価値を見出している。
著者の核となる考え方なのであろうと、
読んでいた僕も一緒に旅をしているようで、わくわくしてしまう。
本書は10ページ程度に1エピソード語られているのだが、
1エピソード1エピソード、中身が軽いものはなく
人の感情、表情、風景の空気感が浮かんでくるような繊細な文章である。
僕の苦手な文字を読んでいるはずなのに、
知らない場所でも、つい妄想してしまっている。
苦しくも楽しい充実した7年の月日が語られているのだと思う。
旅に出て六年。おかしなものだが、ふだんはその長さをまったく感じない。
おそらく、時間の長さや重さを実感できるのはせいぜい1年までで、
それ以降は2年旅しても10年旅しても、同じなのだ。
振り返ると、いつも"あっという間"なのである。
『行かずに死ねるか!世界9万5000㎞自転車ひとり旅』より引用
この文を読んで( ゚д゚)ハッ!とさせられてしまった。
世界で旅をしていてもこの感覚になるのだなと。
僕も会社員を5年ほどしているので時間の流れは
あっという間だということを感じてしまう。
つくづく自分がやりたいことに時間を使うほうがいいと思えてくる。
まとめ
この本を読むと、自分の体を必死に動かし、いくつもの「へこたれ」や「闘志」や「耐え」や「挑み」の感情を持った上で出会った風景でないと、風景は語りかけてこないという厳しい物理的な現実を、ぼくもときに実感することがある。
『行かずに死ねるか!世界9万5000㎞自転車ひとり旅』より引用
文庫版の解説に書かれていたが、
著者がやってきたことはまさしくこのことなんだろうと思う。
タイトルには、ひとり旅と書かれていて
淡々としたイメージがあったが、
まったく逆で
人とのつながりが、いかに大事かということを感じた。
そして、自分がいかにちっぽけな存在かということを感じた。
人と人が目を合わせないような時代になってきているが、
本書を読むと生き方を変えられる気がしてならない。
もっと自分に正直になってアグレッシブに生きようと思う。
エピソードには深く触れてこなかったのは、
実際に読んでいただきたいと思ったからだ。
勇気づけられる素敵な本なので、是非!
本書について
タイトル
行かずに死ねるか!世界9万5000㎞自転車ひとり旅
著者プロフィール
石田ゆうすけ
1969年和歌山県白浜町生まれ。
旅行エッセイスト。
「夢」「相互関係」「食」などをテーマに全国各地で公演もおこなう。
ブログ「石田ゆうすけのエッセイ蔵」も更新中。
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
本書の目次